Ruriko's naisentaiken

エルサルバドル内戦体験記

ある訃報

高校を出てからであった高校時代のシスターが、亡くなったという情報を得た。

「頭のいいセレブの集まる名門校」という偏見のある学校を出たため、私はいつもその偏見に苦々しく思っているのだけれど、そのシスターに、世話になった。と言っても、あちらは、世話しているつもりはなかっただろう。

私はこの「頭のいいセレブの集まる高校」を、その高校独自の奨学金で出た。奨学金は貸与であって、返済の義務があった。日本育英会ではないよ。

私が大学を出て就職してから、毎月高校のある窓口に、返済に行った時、窓口で出会った事務のシスターが、その今回訃報を伝えられた人物だ。

毎月毎月であって、毎月毎月、ほとんど無言の私に、「お偉い」と、つぶやくように言葉をかけただけの、それ以上のお付き合いはなかった。その、「お偉い」という言葉は、通り一片の挨拶ではないことが、彼女のつぶやく態度で知れた。彼女は、その一言を、私に言っているのでなく、どうも自分で納得している言葉に思われたから。

私は正規の仕事をやめて、アルバイト生活に戻った後も、私は収入がある限り、あの学校の窓口に顔を出した。返済が終了した時、彼女は、黙って、私に礼をした。その態度の裏に、私の過ごしている人生に対する思いやりを感じ取ることができた。

あの方が逝って、あの高校には、私の過去を正当に知るものがいなくなった。

そのことは、かなり寂しい。