Ruriko's naisentaiken

エルサルバドル内戦体験記

草抜きの続き

今日は本当はデッサン教室の秋の部の1回目なんだけど、行かなかった。

おばあちゃんの花壇の前に草の山を放置したことが気になっていた。「花壇」と言ったって、別にその一家の地所ではなくて、公道のスペースに彼女が勝手に作った花壇だから、私が手入れしている「斜面」の続きみたいなものだ。花壇に対する権利は誰も持っていないし、もちろん「義務」もない。私と同様、家の近くをゴミだめにされたくない全国ばあさん連の共通の感性によるものであって、たぶん一世代下の人には理解できないだろう。

一世代下の人は、自分の家以外は全部ゴミだめにする「自由」があるらしいし。

でも、おばあちゃんの家は3世代同居で、ひょっとすると彼女は、苦しい立場にあるかもしれない。いつかおばあちゃんが泣きついてきたのを覚えている。裏庭で植物の手入れしていたら、嫁さんがカギを閉めてどこかに出てしまって、帰ってこないから、入れないんだと。其の時私は家族が帰ってくるまで私の家にどうぞと言ったんだけど、彼女は家に帰りたがっていた。

2階にある彼女の部屋の窓が開いているので、私に脚立を使って登っていって、玄関を開けてくれないかと言う。いくらなんでも、私には無理だったから、其の時うちに来る予定だったやんちゃ爺さんを待っているから、来たら頼んであげましょう、と言って、外で待っていた。

そこに、そのやんちゃ爺さんやってきたので、こういうわけで、この二階の窓から入って、玄関を開けてくれないかと頼んだら、やんちゃ爺さんやんちゃなだけあって、何とか登って、家に入ってくれたんだけど、其の時、冗談じゃないことが起きた。

中に嫁さんがいたのである。うっかりしたら、110番通報されちまう。彼、泡食って飛び出してきた。おばあちゃんは無事に家に入ることができたけど、彼女、後で泣きながらやってきた。事情は想像できる。深く立ち入らずに、見送った。

おばあちゃんが元気だった時は、路上の花壇は四季折々に花を咲かせていた。ほんの一角なんだけれど、ゴミだめより花の方が好きな私はときどき立ち止まっては花を見物して楽しんでいた。でもおばあちゃんが倒れてから、花よりゴミの方が好きな世代は、まったく草の1本も抜かなかった。権利も義務もなくて「自由」だけあるんだから、文句は言えない。

このおばあちゃんのことを私が気にかけているのは、実はわけがある。以前住んでいたところで近隣からさんざんな目にあった私たちは、引っ越してきた時に、問題を起こすことを凄く恐れていた。引越しの挨拶には、回れる限り回って、ぺこぺこしまくり、手抜かり無いように挨拶の手ぬぐいを配りまわった。で、かなりびくびくしていたときに、朝会社に出て行った主人に、このおばあちゃんが、おはようと朝の挨拶をしてくれたのだそうだ。

それだけで、「外国人だった主人」が10年以上感謝しているほど、以前の住処は大変だった。今国外にいる主人は、スカイプのたびに、おばあちゃんの安否を尋ねる。このところ見ないというと、心配している。いなくなってから数カ月目にやっと彼女の姿を見た時、私は駆け寄って、このことを伝えた。主人にも「生きていた!」と変な報告をした。

そのおばあちゃんが、二階の窓から眺めて楽しんでいた「花壇」を花壇らしくしてあげたかった。ただそれだけの話で、うっかりすると、あのおばあちゃん、肩身狭い思いをしているかもしれないぞ!

そう思ったらたまらなくなって、朝の5時に飛び出した。あの草の山を、いくつかの束にして、ゴミ出す日を待たないで、自分の家の庭に運び込んでおこうと思ったのだ。

猛然と働いて、草の束は7個できた。今日は資源ごみの日なんだけど、松戸市は市内の木の枝や草の放射能対策で、「汚染植物」の引き取り日を新たに指定したという情報があって、其の通達が自治体の方に来ないので、困った。

そこで、ゴミ集積所まで、偵察に行った。そうしたら二人のおばさんが、抜いた草を集めていて、私が心配した問題について話していた。それによると放射能汚染植物の収集は、水曜の今日らしい。とにかく、透明なビニール袋に入れること、と言う情報があったらしくて、二人で袋に草を詰めていた。

じゃあ、透明な袋を探すか…。私は戻って大きな透明の袋を二つ見つけ、束にした草をほどいて詰め込んだ。袋が大きいから、二つで済んだ。

一仕事して戻ったら、9時。汗みどろだし、支度しても時間がかかるから今日のデッサン教室は間に合わない。仕方がない。部屋の模様替えの続きをした。だから、今日の一日、くたくた。ばかみたい。自分で病気になっているの。