「この世で出会った動物たちの物語10」11月30日
「ちょっとペットを離れて自由な動物たち5」
「改めてハチクイの話」
私は36歳にしてエルサルバドル人と結婚して当地に行ったとき、現地で会った珍しい動植物に身も心も奪われていた。赤道近い国になんか住んだことも訪れたこともなかったから、当然そこに暮らす動植物は、見たことがないものばかりだった。動物園だって中米の一般に暮らす鳥なんか置いていない。世界の動物園に日本で当たり前の雀もカラスも置いていないだろう。
特に鳥が好きな私は、庭に鳥が飛んでくると、飽きもせず一日中眺めて暮らした。
その中に現地の人が「タラポ」と呼んでいる鳥がいた。実は初めのころ、バスの窓から凄く優雅な鳥を見て、あれはグアテマラの国鳥のケッツアルに違いないと思ってしまったけれど、そのケッツアルは当のグアテマラでもほとんど見られなくなっているらしいことを後で知った。
きれいな姿の、尾の形がめずらしい鳥で、それは現地の人が「タラポ」と呼び、本などには「トロヴォス」と書かれた、エルサルバドルの国鳥だった。いろいろ名前があって面倒だから、私は現地の人が呼びならわしている「タラポ」という名に統一する。
日本語では「ハチクイ」という名だと、私は日本に帰ってから知ったんだけれど、名前の通り蜂を食べる鳥らしい。姿は何度も確認しているが、実際に蜂を食べるところは、見たことがない。
一般に飛んでいるから、私がよく見ることができたエルサルバドルのタラポは緑がかっているけれど、コスタリカのものは赤っぽいらしい。中米で唯一コスタリカにだけは行っていないので、残念ながら確認せず、写真だけで見た。
以下は実際に私がカメラに収めたタラポ。
写真だと見落としがちだけど、尾の下のほうに飾りのような尾が付いているのが見えるだろうか。はじめ見た時は尾が途中で剥げているのかと、無風流なことを考えた。
よく見るためには多分これがいい。検索で見つけたタラポ。↓
以下は自作のタラポの絵と、その下に下がっているのは、タラポの尾でできたイアリング。 実は娘のものだけれど、あまりに面白いので取り上げて、絵とセットで飾りにした。
題して「蜂食うタラポ」。このような尾羽を持った鳥は、どこにも見たことがない。いまだに絵の題材にするほど、私はこの鳥にほれ込んだ。
この絵はまだエルサルバドルにいたころ、絵の描き方など知らない時に描いたもの。花は現地の人が「イランイラン」と呼んでいる凄く美しい花の咲く木。ただし、その木の名前もいろいろあるらしくて、私は最初に聞いた名前を記す。
花に鳥
孤高のタラポ
花に鳥2(縦長)
奇木に描いたタラポ(最新のタラポ:自宅展示)
ドアノブに描いたタラポ
これもタラポの一種らしい。尾の特徴がないので、題は「虹色の笛」
というわけで、私のタラポ気違いは度を越していた。絵が売れると次を描き、家にタラポの絵がなくなったことがない。死ぬ前にもう一度見たいと思うが、エルサルバドル人にとっては、どうでもいいごく当たり前の鳥なので、誰も関心を示さない。だいたい、この鳥の本名、「トロヴォス」を知っているエルサルバドル人は、見たことがない。