Ruriko's naisentaiken

エルサルバドル内戦体験記

どうしようもないわ、もう

この家のなか、4人が病人になった。

娘、舅、孫、そして家政婦。この、歩けば普通に足の裏でゴキブリがつぶれ、数分タオルを放置しておくと蠅がびっしりたかる、何がどこに置いてあるかわからないこの家で、いきなり、すべてを任されても、私は超人じゃない。

台所のものはすべて半端で使い物になるものはなく、切れる包丁もなく、焦げ付かないようにコーティングされた鍋もフライパンもすべてがりがりはがされ、コンロは私の胸の高さでしかも手前のコンロは壊れていて、奥のコンロしかつかない。冷蔵庫には10年前くらいの古い物がぎっしり詰め込まれていて、この中で5人のメンバーのうちの4人が病気になったからって、冷笑する以外にない。

私は8年間、内戦のさなかで6回も家を変えて暮らしたが、ただの一度もこんな不潔で不便な家に住んだことがない。

ところで、昨日、娘が息子を連れて、鉛汚染の検査にいった。帰った時娘の顔を見た。
結果がわかる顔だった。娘も孫も、肝臓に障害があり、娘はもしかしたら膀胱を人工膀胱に替える手術が必要だと言われたらしい。彼女はそれを拒否した。自分のやり方で癌と戦うという。

自分のやり方は食事療法。それは私の腕にかかっているという。

このゴキブリの巣で、そんな責任を持たされたって、果たせない。だいたい、自分の知っている食材がない。代替品もない。コンロもなければ鍋もない。水はすべて鉛汚染されていて、私には買い物さえ主導権がない。