Ruriko's naisentaiken

エルサルバドル内戦体験記

アンチエージング

アンチエージングとかいう言葉

数年前から、骨の劣化が原因で、いろいろな故障が起きた。必要なのは「治療」だと信じていた。整形外科に通って、ボナロンと言う薬を飲み続けて2年以上になる。それだけで、「劣化」を止め、寿命まで自力で歩くことができればいいと、そのくらいに考えていた。

しかし、草抜きのために腰をかがめたり、階段の上り下りに膝を使ったりすると、腰が痛み、膝が痛み、手を使わずに起き上がれなかった。で、テレビやインターネットで話題になっている「コンドロイチン」とかいうものを、ヤフーや、楽天市場で、検索し、キャンペーンとかで安い時だけ買っては試していた。キャッチフレーズにいろいろ「美容」のことが書いてあったけれど、私はあくまで、治療の目的だった。

ところで一方、私はネットショッピングにお金をかけまいと、いろいろなサイトで、ポイント稼ぎのためアンケートと言うものに登録して、アンケートに応じまくった。其のアンケートに多く出てくるものが、医療関係よりも、美容関係、特に「アンチエージング」とやらいうものが多かった。エステだの、脱毛だの、美白だの、とにかく、年齢に抵抗するためのから騒ぎの類である。

美しいことは良きことに違いない。しかし、「老」を「醜」とは、思わなかった。白髪の「素敵な」じじばばを知っているし、憧れてさえいた。だから「アンチエージング」と言う言葉に抵抗を感じた。

私はポイントが欲しいから、アンケートにどんどん答えてはいたが、エステだの、アンチエージング化粧品だのの勧誘つきの美容関係の回答には、うんざりしていた。

アンケートの中には、CM映像があって、中には、子供が学校で、自分の母親が年取って見えると言って、授業参観に来ないでほしいとかいうセリフがでてくる。母親がそれにガガ――ンと反応して、「子供の恥にならないように」一所懸命若返りに勤める、そういうシーンがある。

それを見るにつけ、世の中、母親が年取ると子供が恥じるなんて、そんなくだらない価値観を子供に植え付けるような教育をしているのかい、そう感じて、私はCM相手に腹を立てた。

人間は必ず年をとる。抵抗するのは馬鹿げている。むしろ、ただ若いだけの怠惰な若者より、真摯に生きた70年80年の人生を誇りを持って生きるべきだ。しわだの乾燥肌だの、はげだの白髪だのをゴマ化してなんになる。

年齢を重ねたら、年齢を重ねたことへの誇りがあっていいはずだ。年齢による「変化」に逆らって、20歳若く見えるのが良いはずだと言う価値観が、いったいなぜ世に蔓延しているのか、忌々しい思いだった。

私は70になった。真摯に生きた人生を、ただの1秒たりともうぬらにバカにされてたまるかわ!アンチエージングCMを見るたびに、本気になって怒った。私の生きた期間の、1秒たりとも70に欠けるような「外見」になどなりたくない。できたしわの1本たりとも、「無駄」だなどと思われたくない。若さと外見にしか価値を見いだせないバカ者どもめが!

そういう思いがあったから、その手のどんな勧誘にも乗らなかった。あらゆる選択問題の回答に「興味がない」を選んだ。パソコン相手に、一人で怒っていた。人間のむなしい執着心をあおり、ヒトの目を真理から遠ざける世の中の風潮を憎んだ。まるで老人が「無駄な」生き物みたいじゃないか、この姥捨て文化の情けない化け物奴!

私は、それでも骨骨と思って、骨の劣化の治療をしようと思った。それで見つけたのが、この前アフィリエイトで載せた「グルコサミン&コンドロイチン&コラーゲン」だった。取り寄せた袋に「効果」が書いてあるけど、文字が小さいので読んだことがない。なにしろ、骨骨としか思わなかったから。

ところで私は冬に弱い。毎年毎年冬を通過するのが私の最大の課題で、春を待てば骨まで治るような気分だった。ところがその春、3月に、救急車を呼ぶほどの状態になった。問題はやっぱり骨。実は、そのころしばらく「コンドロイチンその他」を飲んでいなかった。病院から戻ってから、それをかかさず飲み始めた。

いつのころから、私は朝、鏡に映る自分の顔が、元気を取り戻しているらしいのを感じていた。私は特に冬、皮膚の乾きによるかゆみに苦しんで、アロエ関係のクリームをつけていたから、そのせいかと思った。「化粧品」なんて言うものではなくて、生協で買ったもので、外側に「乾燥防止」と表示してある、これも自分では「治療薬」の一種と認識していたから。

ところが、この前、まったくの部外者で、御世辞言う必要もない付き合いの美容師の表情から、自分の顔が、なんだか「活性化」しているらしいことに気づかされた。それでも私は、「精神的な充実感」のせいだろうと、彼に言ったんだけど、ずっと、彼の表情を「不思議だ」と思ってしまったので、はじめて私は、飲んでいる「骨の薬」の成分と、その効果を見た。

どうせ、「治療」より「美容」に神経を立てている若く化けたいみんなは知っているんだろう。化けることに抵抗している私は初めて「コラーゲン」が何物かを知った。

「へ~~~~。自分は知らずにアンチエージングとやらをやっていたんだ^^。」