Ruriko's naisentaiken

エルサルバドル内戦体験記

お気に入りの美容院

久しぶりに、昔住んでいた家の近くにある美容院に行った。1000円カットの床屋はシャンプーしてくれないし、体が痛んで、頭を洗う姿勢が苦痛だった。でも、13日に出かける約束があって、このままではまずいと思って、意を決して出かけたのだった。その美容院の亭主と昔懇意にしていた。ユーモアのセンスがあり、なによりも商売っ気がなくて、話をしていて、面白いから。

9時に電話を入れて、途中2,3の用事をすませながら行ったから、11時ごろついた。昔の通り、別に立地条件も良くないし、凄く流行っている店でもないから、店は閑散としている。客は、私しかいなかった。

店は通りに面していて、自転車を置くスペースがないから、「自家用車で来たんだけど、置く場所ないの?」と聞いたら、彼、まったく普通の顔して、店の前にくぼみがあるから、そこに置くといいよ」という。見もしないで、「車」だとは思っていないところが、愉快だ。で、その「くぼみ」を探していたら、彼、のこのこ出て来て、私の「天魔号」をみて、「わあ、かっこいい車だなあ!」と、本当に感心しているようだ。

その態度でもう、前後の説明なんか無用だと理解して、5年間も来なかった理由もはぶいて、ずっと付き合いがあったような話し方になった。

気をつけてもらうように体調など事情を言ったら、引き受けてくれた。こういうところは、実に融通のきく男だ。どうせ相手も暇なんだし、この男、私と話すのを、昔楽しみにしていたから、話がしやすい。昔のようによもやま話をしながら、仕事が進み、カットの具合を合わせ鏡で見たら、久しぶりに、本職の美容師が刈ったものは、なんだか素敵だなあ、と感じた。自分じゃ、こうはいかないんだ。なにしろ、見ないで刈るんだから。

ふと前の壁を見たら、いろいろな張り紙があった。頭皮のエステとか、マッサージとか、いろいろな私の知らないメニューがあって、その中に「出張カット」などというものもある。なんだ、こんなものもあるのか、いったいいくらなの?と聞いたら、相手によって、違うんだと。雰囲気や相性によって、値が決まるとか、でたらめをいう。ちょっと利用しようと思ったのに、どうせ相手を見て、もうからないと思ったのか、乗らないや^^。

エステってのは、どんないいことがあるの?と聞いたら、俺の好きな鯛やき代がもうかるだけで、受ける方は、3時間ぐらいいい気分になるのさ。でも相手には1ヶ月効果が続きますって言っているんだ、だって。じゃ、鯛やき10匹とか現物で支払うことも可能なの?彼、うれしそうに笑って、それでもいいという。

期待通りの軽妙な会話に、なんとなく、いい気分になって、天魔号に乗って帰路についた。

ひどく寒い日だった。あの町は、桜の咲く頃が美しく、また花見のころに来ると言ってきたが、その桜並木を通って帰ってきたんだけど、桜の枝は蕾も見えず花の気配は感じられなかった。

帰り、まだわずかに期待を寄せて、石を探して小金原ガーデンとかいうところに寄ってみたが、植木ばかりで、石はもう、置いていなかった。別の、昔懇意にしていた植木屋にも寄ったが、まるでなかった。あと2軒ばかり尋ねてみたいところがあるけれど、もっと暖かくなってからにしようと思って、帰ってきた。なにしろ、バッテリーが少なくなっていたから。