Ruriko's naisentaiken

エルサルバドル内戦体験記

暴風とゆず


怖いほどの豪雨が、窓をたたきつけはじめたのは、7時ごろだったかな。すでに雨戸をあけ、テレビ体操も済ませていた。雨がやんだら鶏の餌をやりに行こうと思っていたのに、雨はますます激しくなって、外になんか出られないと悟った。

別に鶏は、グルメなだけで、餌がないわけじゃない。好きなものを先に食べて、かなりの餌を箱の外に出すのだから、1日ぐらいやらなくたって死にはしない。居間になっている2階の雨戸は開けていたが、鶏小屋に通じる下の部屋は、雨戸が閉まったままだった。豪雨が恐ろしくて、開ける気さえ起きない。


ところが、ネットを覗きこんでしばらくしたら、急に外が明るくなった。雨がやんで日が差している見たい。何だ、落ち着いたのか、と思って、鶏に餌をやったり、ゴミを出したりするために外に出たら、庭は落ち葉や折れた木の枝が散乱していて、例の土砂の山に遮られた雨水が池になっていた。


もう落ち着いたのだと思って、少し掃除を始めたのだけど、水浸しだから、やっぱり本格的な掃除は、乾くのを待とうと思って、家に入った。

ところが、また暗くなり、雨が降り始め、ごうごうと音を立てて風が吹き始めた。怖かった。さっき掃除しかけたところなんか、まるで甲斐もなく、元の木阿弥になっていた。

夕方になって、やっと雨風が治まったので、モノ好きに外に出てみたら、三輪車が横倒しになっていた。かけた覆いも吹き飛ばされ、覆いが風であおられたために、引きずられた自転車が倒れたらしい。2輪車ならともかく、3輪車がこんな無残な倒れ方をするとは、どれほどつよう風だったのだろう。


崖を見たら、段々の上にゆずがたくさん落ちていた。そのゆずは、うちのでなくて、お向かいの厄介な家のゆずだ。別にうちにもゆずがあるから、他人のゆずを欲しがったりしないのだけど、毎年、ゆずのために、目じり釣りあげて、ゆずをかえせと言いに来る。
今年はうちの側に防波壁を作ったから、人間は侵入できないが、ゆずは勝手に不法侵入している。勝手に断りなくうちの領地に入っているのだから、逮捕監禁してもいいのだけど、どうせまた、上のばあさん、騒ぐだろう。

仕方ない、嫌がらせばかりするから、持って行ってはやらないけれど、来たら渡すために、ひとまとめにしておいた。塀を立てる時も、さんざん嫌がらせを言いに来たので、Mさんがうんざりしていた。ほとんど、交流がないのに、なんでああ嫌がらせが好きなんだろう。隣のゆずまで、低級なゆずに見えてきた。