Ruriko's naisentaiken

エルサルバドル内戦体験記

土木の続き

今日は、土嚢の袋を7個持参して、手順を考えて出発した。

昨日置きっぱなしにした20キロの袋が3つあり、土を入れたバケツも置いてきた。なにしろ、何度も坂道を土嚢を積んで往復したから、バッテリーが切れてしまって、充電していたら雨が降り出したので、取りに行かなかったのだ。

作業の邪魔になるから、仕事が始まる前に、すべての袋を作ったら、全部入口に運んで、そこから往復を繰り返す手はずを整えるつもりだった。

入り口付近に、大きな車が2台あって、相手が気がつかなければ、自転車なんかつぶされそう。ところが入った途端に、ぶったまげるほどの警笛が鳴って、わわわっと、茫然としていたら、昨日の長身の男が出てきたので、挨拶した。この警報は、私が入ったからですか?と、聞いたら、そうだという。でも、快く、採取してもいい土の山に通してくれた。

ところで、今日は、男の顔を見ることができたのだけど、彼、アントニオ猪木そっくり。だいたい、あの手の顔は土建屋が似合う。

さて、山に登ろうとしたら、昨夜の雨でやわらかい地面が沼地のようになっていた。いきなり、ずぶっとくるぶしまでつかり、靴が泥だらけ。すぐにぬかるみから足を引っこ抜いたはいいものの、足が泥で重くなった。まあ、初めから一時に7個の土嚢袋に土を詰め込んで、一個ずつ自転車に載せて入り口近くまで運び、移植シャベルで靴の泥を落として、家まで2個ずつ運び始めた。

初めは、少し遠回りだけど、重いものをバランスを取りながら緊張して走るには、舗装された道がいいだろうと、思った。ところが安全な道を往復していくうち、交通量が多くなって、なんだか怖くなってきた。

この際、あの発光襷をつけちゃおう。襷は昼でも7つ道具の中に入れてあるから、すぐ取り出せる。というのは、乗用車は、婆さんの三輪車を避けてくれるが、ダンプや大型車は、まるで避けようとしない。もしかしたら車の大きさによっては、運転手の目線が違うのかもしれない。車を運転できないからしたことがない私は、そう考えた。

しかし、発光襷をつけても、ダンプはほとんど私の肩をかすめて走り去った。肝を冷やす思いをして、とうとう、舗装された道路を断念した。近道は坂川に沿っていくのだけど、ジャリ道でしかも穴だらけ。雨のあとだからところどころ、水がたまっている。そこは、ほとんど歩行者ばかりで歩行者はだいたい上の土手を歩いている。だから私にとっては危険は少ないが、そのかわり、土嚢を積んでいるので、穴だらけの道で、バランスを崩したら、すぐに転倒する。

ゆっくりゆっくり、ハンドル操作をしながら、水たまりとごろた石をよけて歩いた。ところが家の近くの中学校の前の舗装道路に入った途端、ダンプばかりが列を作って入ってくる。実は、このあたり、東洋学園大学が畑を買って運動場にしたり、市と県と国が一緒に出資して、この辺りにあるため池を中心に、新しい公園を作るとかで、あっちもこっちも工事をしているのだ。

しかたない。歩道に乗って待機していたけれど、ダンプの列がなかなか尽きず、三輪車引きずって、何とか通れる道を探して、家のそばの坂の下まで辿りついた。土嚢を積んで坂をいちいち上がると、それだけ体力が消耗するから、一時、坂の下に置いたのだ。それを、5往復。

さて、10個の袋を1個ずつ家まで運ぶのが、最後の大仕事。一つずつ運んでいたら、近所の人がいろいろ話しかけてきた。私がトラブルを避けて、自分ですべてを処理しようとしているのを知って、自分の身の回りに起きたトラブルの話も教えてくれた。おまけに、うまく渡り合えば、土は、どこにでもあるそうだ。そのうまく渡り合う能力が、私にはない。多少遠くても、トラブルなしに快く土をとらせてくれるアントニオ猪木のところに通って、出来る限り、土を運んでくるつもりだ。

明日は母の命日で、晴れるらしいから、ちょっと墓参りに行く。だから土運びは、休み。