Ruriko's naisentaiken

エルサルバドル内戦体験記

強力洗剤

もう10日ほど前かな、イワシ丸干しを電子オーブンで焼いて食べた。それは凄く美味しかったが、困ったことに部屋中イワシの臭いが蔓延した。其の臭いはしつこくて、部屋の窓を全部開け、寒さをしのぐために私が布団にもぐりこんで半日たってから、窓を閉めても、まだ消えなかった。部屋中に臭い消しのスプレーを吹きかけ、カーテンやぶら下がっていたタオルも代え、それでやれやれと落ち着いて座ると、何処からともなくあのイワシが匂ってきた。

どうも自分にその匂いが染みついているらしいと思った私は、風邪のために、頭を洗わなかった事に気がついて、3日たってから、念入りに頭を洗い、上着も防寒具も着ていた服を全部洗い、それで清潔な服に着替えて、やっと落ち着いたと思って座ると、やっぱりどこからか臭ってきた。

私はとうとう、自分の着ている服を隅々まで臭いをかいでみた。それでやっと発見したのが、私が愛用している袖なしの防寒着のすその裏側にしみがあって、そこが臭いのもとだという事だった。それで私は一度洗ったその防寒着を脱いで、その部分だけ手持ちのあらゆる洗剤を塗り込んで手洗いし、その上で洗濯機にかけた。

それで今日それをエアコンの前でほしたのだけど、どこからともなくほのぼのと、におってくる匂いに気がついた。乾いてから同じ部分の臭いを嗅いだら、汚れは落ちてはいたものの、臭いはまるで落ちていなかった。どうすればいいだろう…。私は途方にくれた。実は、その防寒着、10年ばかり愛用している物で、未だ主人がいたころ、主人が作業着を買うのについていって、どこかの作業着専門の店で買ったものだ。以後どこでも同じものは見かけたことがなかったし、汚れても手放す気がないのだ。

別に意地を張っているのでなく、私は仕事着が好きなのだ。人が宝石をめでるごとく、私は仕事着をめでるだけで、趣味が違うだけの話、愛したものをそう簡単に手放せない。昔主人が来ていた仕事着が、主人の仕事中の怪我で、襟もとから胸にかけて血だらけになった。それを捨てるという主人から其の仕事着をもぎり取って、血のシミのあとに刺繍をして、私は愛用をしている。それほど私は仕事着が好きなのであって、宝石収集家が偏執狂でないなら、私だって偏執狂ではない。

それはそうとして、愛する仕事着を元の状態に戻すべく、私は努力した。今度は、消臭や、殺菌効果のある、キッチンハイタ―を臭い元にしみこませてしばらくおいてから、また洗濯機にかけている。雪だというのに、今日3回もその仕事着のために洗濯機を回した。成功するまで、私は努力するつもりだ。