Ruriko's naisentaiken

エルサルバドル内戦体験記

また物語の章が終わる

今日鶏たちがみんな行く。

雨が降らないうちに、鶏を入れる箱を用意した。ロロが卵をうみ始めているから、使い慣れた巣箱も入れてやろう。ロロは子育て上手の鶏で、私はあまり増えすぎるのを恐れて、自由に子育てをさせてやれなかった。引き取ってくれる家は、増やしてもいいというから、ロロの巣箱も入れることにした。ここにいるより、幸福になってくれよと、願っている。

マックは老齢で長くは生きないだろう。最初の妻、ロケが死んでから、あまり、他のめんどりにはもてなかった。孤独だったけれど、引き取られて行く家は鶏だらけだ。めんどりのなかには蓼食う虫もいるだろう。

みんないなくなったら、小屋を取り壊そうと思う。引っ越しと同時に立てていらい台風にもびくともしなかった小屋だから、お母さん凄いと娘が友達に自慢していた。でも、主のいない。からの小屋を見るのはつらい。

今年は手入れしたおかげで、柚子が形良く実った。私は良いから、近所にみんなあげて行こう。なにやかやと世話になった。もう、あげられるもの柚子しかないから。でも来年、私の崖にたくさん花が咲くよ。入り口の中腹は百合園だ。自分が見ることができないのが残念だけど、しかたがない。今上の方にピンクの菊が咲き乱れている。通る人が写真を撮ったりしている。誰でも楽しんでくれれば、無人でも崖の庭園を創った甲斐がある。

この家、愛していた。母が武蔵境の自宅を手放さないでほしいと遺言したが、6人の遺族は誰も一人で200坪を維持できるものがいなかったから、売って6等分にしてしまった。私は母のこころを受け継ぐつもりでこの家を買い、母の家の花壇からできる限りの植物を移してきた。金魚も泥鰌も運んできた。金魚や泥鰌は死んだけれど、崖の真ん中に、母が大事にしていた椿を植えて、勝手に母の墓標と呼んでいた。

この家を、私は愛していた。