Ruriko's naisentaiken

エルサルバドル内戦体験記

デッサン教室

危ないところだった。今日はデッサンに行く予定で、昨日のうちにすべての準備は整っていた。ただ、体調が、いかにも怪しくて、薬を飲み、湿布して、凄く早く寝た。3月にひねって激痛を起こした腰のちょうど同じ部分が、ひくひく痛んだ。朝起きた時、もう大丈夫だと感じたので、鶏に餌をやったり、朝食を作ったり、いつもの行動をとっていた。

ところが、何かの拍子に、例のところがずずんと痛んだ。うっかり移動したら、3月と同じことになると感じるほど、その痛みは危険な感じだった。

どうしよう!と思った。このまま、自転車で40分走ったら途中で動けなくなるような予感がした。休む以外にないだろうか…

こういう時にどういう手当をするべきか、それでもまだ、未練があったので、一所懸命考えた。そうしたら、思い出した。救急車で運ばれたあの日、同じことが起きたら応急処置として、使うように渡された座薬があって、あれから一度も手つかずに冷蔵庫に保存していたことを。

あれだ!と考えた。すでに汗をかいていたので、そっと風呂に浸かり、そろそろと出て来て、湿布をし、座薬を入れて、そのまま30分、安静にしていた。それから、ゆっくり起きて、デッサンに行く気になった。なにしろ、2007年から、本格的な絵画の活動をしていない。最後の個展をやってから、小さな絵を趣味的にちょろちょろ描いていただけ。やっとする気になって、やっぱり人物を描かなければ、と思った。

ゆっくりゆっくり自転車をこいだ。柏に行くには、峠のような道を越えて、紫陽花通りを越えて、6号線に載らなければならない。6号線の歩道は、異常に狭いので、凄く神経を使う。だからと言って車道に出たら、ひとたまりもない。なにしろ私の自転車は時速15キロだし、車は100キロ近く出して、ぶっ飛ばしているんだから。

今日のデッサンはクロッキーばかりだった。この前の人とは別のモデルさんで、感じのいい人だけど、なんだか、無理なポーズばかりだった。居合わせた絵描きの一人が、あなた、ヨガをやっていらっしゃるんですか?なんて質問していた。

そうではないと答えていたけど、あんな無理なポーズを描いても、意味あるのかなあ。普通ああいうポーズの人間を見かけることはないけれど^^。公園のベンチにボーっと座っている人とか、電車のつり革にぶら下がっている人とか、新聞読みながら、お茶飲んでいる人とか、そういうポーズを描いてみたいな。

終わったので、帰える準備をしていたら、また私の地下足袋が目をひいたらしい。または、何か興味あるのに、話しかける理由が見つからないのか^^。仕方がないから、自分の「自宅常設展」の案内のはがきを数人の人に渡してきた。誰か、来てくれたらいいな。

帰り、さんざん考えながら走った。かっぱ寿司に寄ろうか、それとも、まっすぐ帰って、寝るべきか。

で、結局、かっぱ寿司に入った。ところが、御勘定をするため並んでいたら、一人の爺が話しかけてきた。

地震があったあった、怖かった。もう、どうしようと思った。俺もここで死ぬのかな、と思った。

私は怪訝な顔をして聞き返した。

いつどこで地震があったんですか?

今数分前、あったじゃないか、あそこに座っていたら、がくんと揺れて、肝をつぶしたよ。

私だって、この店で寿司を4皿も食べていたんだ。数分前の地震なら、感じているはずなのに、そんな肝をつぶして、生命を脅かされるような揺れを感じていない。ふとレジの女の子を見たら、ニヤニヤ笑っている。

ああ、このおやじだけが感じたんだな、と思った。地震にそんなにおびえていて、よく放射線汚染も気にしないで、平気で生魚、食べていられるよ。

ああ、和歌山でも地震らしいですね、そのうち富士山も大噴火ですよ。そうしたら、みんな死ぬから、誰かが地団太踏んで起きたくらいの揺れで大騒ぎすることないですよ。

そう言ったら、彼、自転車のところに行った私に追いすがってきた。

ほんとかよ、ほんとかよ、俺たち死ぬのかよ。

あのねえ、そのうちみんな死ぬの、大丈夫よ、みんな一緒に死ぬんだから!

いい捨てて、振り切って、家に帰ってきた。いろんな人がいるもんだ。